介護施設でのBCP(事業継続計画)は「作成すること」よりも「実際に役立つこと」が重要です。
書類を整えて提出しても、災害時に機能しなければ意味がありません。
そこで参考になるのが、過去の災害で介護施設がどのように対応したか という事例です。東日本大震災、熊本地震、能登半島地震など、日本各地の大規模災害で浮き彫りになった課題は、これからBCPを強化しようとする施設にとって大きなヒントになります。
この記事では、実際の事例を紹介しながら、そこから学べる教訓と、明日から活かせる実践ポイントを整理しました。
東日本大震災(2011年)の事例と教訓
発生当時の状況
- 多くの介護施設が長期間にわたり停電・断水を経験。
- 道路が寸断され、物資の供給が止まった。
- 職員の多くは家族の安否を気にかけながら泊まり込みで勤務。
対応の課題
- 入居者だけでなく職員用の食料や水が不足。
- 移動が困難な利用者を避難所に移せず、施設内に留まるケースが多数。
- 物資不足から清潔を保つことが難しく、褥瘡や感染症リスクが高まった。
教訓
- 備蓄は入居者+職員分が必須。職員が倒れては入居者を守れない。
- 在宅避難を前提とした備え が不可欠。避難所に移れない現実を踏まえる必要。
- 清潔維持の代替手段 を持っていれば感染症リスクを大幅に減らせた。
熊本地震(2016年)の事例と教訓
発生当時の状況
- 建物に被害を受け、施設内に留まれないケースが発生。
- 入居者を他の避難所や介護施設へ移送する必要が生じた。
- 交通網の混乱により搬送に時間がかかり、職員の負担が増大。
対応の課題
- 移送手段やルートの確保が十分でなかった。
- 避難先の受け入れ体制が整っていない場合が多かった。
- 入居者の医療的ニーズ(酸素・投薬など)を移送時にどう維持するかが大きな課題。
教訓
- 地域や他施設との連携協定 が不可欠。応援職員や受け入れ先を事前に確保しておく必要。
- 避難車両や搬送器具の準備 が必須。特に寝たきり高齢者の搬送は事前想定が不可欠。
- 医療と介護の連携 が生命線になる。
能登半島地震(2024年)の事例と教訓
発生当時の状況
- 長期間にわたる停電・断水が発生。
- 雪による寒さも重なり、入居者・職員双方の疲労が深刻化。
- 水不足で清潔維持が困難になり、入居者の不安や体調悪化につながった。
対応の課題
- トイレや入浴ができず、衛生環境が著しく悪化。
- 介護職員は体拭きや排泄ケアに追われ、疲労困憊に。
- 電源が確保できず、医療機器や通信が途絶する施設もあった。
教訓
- 少ない水で清潔を保てるケア機器 が導入されていた施設では、入居者の安心度が高かった。
- 電源確保(ポータブル蓄電池など) は清潔ケア・医療機器・通信のすべてを支える基盤。
- 災害が長期化する視点 を持つことが重要。
事例から導かれる実践ポイント
- 備蓄は「入居者+職員分」確保する
- 入居者だけでなく、職員用の食料・水・衛生用品も忘れずに。
- 在宅避難を前提にする
- 移送が困難な現実を踏まえ、施設内で数日間生活を継続できる体制を整える。
- 地域・他施設・行政との連携協定
- 物資や人材を融通できる協力体制を平時から築く。
- 清潔維持の手段を確保する
- 体拭きだけでなく、少量の水で全身を洗えるケア機器 を備えると、入居者と職員の双方に安心をもたらす。
- 訓練で課題を洗い出す
- 机上の想定だけでなく、実際に搬送・避難・物資利用をシミュレーションする。
自施設に取り入れるためのチェックリスト
- 過去の災害事例を職員全員で共有しているか
- 自施設の立地リスク(津波・洪水・土砂災害など)を明確化しているか
- 災害時に外部からの応援を受け入れる協定を結んでいるか
- 入居者が安心できる清潔環境をどう維持するか準備しているか
- 職員用備蓄を整備しているか
まとめ
介護施設のBCPは「想定」だけでは不十分で、過去の災害から学んだ実践的な改善 を反映させることが何よりも大切です。
東日本大震災では「備蓄不足」、熊本地震では「連携不足」、能登半島地震では「長期化への備え不足」が浮き彫りになりました。
これらの教訓を自施設のBCPに落とし込み、入居者と職員が共に安心できる環境 を整えていきましょう。
スイトルボディのワンポイント!
震災時にも活躍する
節水機能
いざという震災時でも身近にあれば家族も安心
能登半島地震の時の様子↓
石川県珠洲市からの要請を受けて、スイトルボディを被災地の現地へ持ち込みました。二週間ほど入浴できていなかった方がたくさんおられ、非常に喜んで頂きました。



突然の災害、断水に備え、個人宅や介護施設で危機管理のひとつとしても利用されています。
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