災害が起きたとき、介護施設で最も大切なのは「入居者の命と生活を守ること」です。
停電や断水が続けば食事の提供も難しくなり、必要な物資が届かなければ生活の質は大きく低下します。特に要介護高齢者は体力や免疫力が低いため、非常食や物資の備蓄が不十分だと健康を損なうリスクが高まります。
この記事では、介護施設が災害時に備えて整えるべき 非常食と物資備蓄の基本ポイント を解説します。入居者の嚥下状態やアレルギー、医療的なケアの必要性を踏まえた、実践的な備えを一緒に確認していきましょう。
なぜ介護施設に十分な備蓄が必要なのか
- 物流が止まる可能性:大規模災害では道路が寸断され、数日間は物資が届かない。
- 避難が難しい入居者:一般避難所では高齢者や要介護者の受け入れが困難な場合が多い。
- 健康リスクが高い:脱水や低栄養、感染症のリスクが高まる。
👉 備蓄は「余裕があれば」ではなく「施設経営の必須要件」と考える必要があります。
非常食の備蓄ポイント
1. 必要量の目安
- 1人あたり 1日3食×3日分(最低限) を確保
- 可能なら 7日分 を目標にすると安心
- 職員の分も忘れずに含める
2. 高齢者に配慮した食品選び
- 嚥下に配慮:やわらかい食品、ゼリー食、とろみ調整剤
- アレルギー対応:乳・小麦など主要アレルゲンを避けた選択肢を用意
- 栄養バランス:エネルギー源(ご飯・パン)、タンパク質(缶詰・レトルト)、ビタミン・ミネラル(野菜スープなど)
3. 保存性と調理方法
- 常温保存できるもの
- 水や火を使わず食べられる食品
- 電子レンジが使えないことを前提にする
4. 日常利用とローリングストック
- 日常食として使いながら、賞味期限が近いものを順次入れ替える
- 特別食(糖尿病食、腎臓病食など)も備えておく
水の備蓄
- 飲料水:1人1日3リットルを目安に3日分以上
- 調理用・清潔用:飲料以外にも使用することを想定
- 保存水とウォーターサーバーの併用も有効
👉 水は断水記事とも連携して訴求
➡ 介護施設の断水対策|少量の水で衛生を守る工夫
衛生関連物資の備蓄
- 紙おむつ・尿取りパッド
- 介護用手袋・マスク・エプロン
- 体拭きシート・ドライシャンプー
- 簡易トイレ・処理袋・凝固剤
- 消毒液や除菌用品
👉 清潔を守ることは感染症予防につながる
➡ 介護施設の衛生管理と感染症対策|災害時に清潔を守る工夫
医療関連物資の備蓄
- 常備薬・処方薬(最低3日分)
- 血圧計・体温計・パルスオキシメーター
- 酸素ボンベや吸引器(予備バッテリーも含む)
- 栄養補助食品(経管栄養用)
👉 医療依存度が高い入居者の有無によって必要量が変わるため、医師・薬剤師との連携が欠かせません。
職員のための備蓄
- 職員の食事・水
- 寝袋・毛布
- 携帯用充電器
- 衛生用品(マスク・手指消毒)
👉 職員が安心して働ける体制を整えることが、結果的に入居者の安全につながります。
備蓄管理の工夫
- リスト化する:誰でも分かるように備蓄リストを作成
- 保管場所を明示:どこに何があるか一目でわかるように表示
- 期限管理を徹底:賞味期限・使用期限を定期的に確認
- 担当者を決める:物資管理の責任者を明確にする
- 定期訓練と連動:防災訓練時に実際に備蓄を確認
まとめ
介護施設の非常食・物資備蓄は、単なる「備え」ではなく、入居者の命と生活を守るための 経営上の必須要件 です。
食料・水・衛生用品・医療用品・職員用物資をバランスよく整備し、日常的に入れ替えながら管理していくことが重要です。
災害はいつ起こるかわかりません。しかし、備蓄が整っていれば「入居者が不安なく過ごせる時間」を守ることができます。